産業医学図書 産業医学定期誌

産業医学図書

産業医・産業保健の発展のために ― 基本概念の考究と自己の信念の樹立を通じて ―

産業医・産業保健の発展のために ― 基本概念の考究と自己の信念の樹立を通じて ―

産業医科大学 名誉教授・元学長

大久保 利晃 著

2023年(令和5年)10月12日 発行
A5判/216頁/本文1色刷

定 価:1,980円(消費税込)
送 料:配送地域により異なります。

 


内 容:

産業保健サービスに必要な普遍の真理を身につけ、時代の変化に果敢に挑め!

◆いつの時代にも変わらない、産業保健に携わる者が学び身につけるべき「基本概念」とは。

◆時代の変化に対応し役割を果たすための、これからの産業医・産業保健に求められる能力を解説。

◆「産業保健の理想の地」を求めて広大な荒海へと舟を漕ぎだそうとする、勇気ある産業医・産業保健関係者の志気を高める一冊。


産業保健の「形」は社会の動向に合わせて変化するが、その「基本概念」は変わらない。
産業保健サービスを展開していくうえで必要な、普遍の真理を身につけ、「基本概念」を掘り下げて考えていくこと。
そのなかで自己の信念を樹立し、その信念のもとに勇気ある改革を提言し、実行していくこと。
社会の動向に合わせて柔軟に対応しつつ、常に「産業保健とは何か、医学とは何か、人間とは何か」を考え続けること。
その姿勢で臨む産業医こそが、日本の産業保健の力強い未来を切り開く。

『産業医学ジャーナル』2020年43-2~2023年46-1にかけて連載され、これからの日本の産業保健を担う産業医・産業保健関係者から篤い共感を得た「産業保健の発展と産業医」の内容をベースに再構築・再編集。「産業保健の理想の地」を求めて広大な荒海へと舟を漕ぎだそうとする、勇気ある産業医・産業保健関係者に必要な能力を解説し、その志気を高める一冊。


著者略歴:


大久保 利晃(おおくぼ としてる)


1939年6月6日 生まれ
現 職: 独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
    労働者放射線障害防止研究センター センター長
学 歴: 1966年3月 慶応義塾大学 医学部卒業 医学博士


1966年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同学部衛生学公衆衛生学助手・講師として10年間勤務。続く5.5年間、自治医科大学衛生学助教授。
その後、1983年より産業医科大学教授に就任し、同大学産業医実務研修センター所長を経て、2002年から3年間、産業医科大学学長を務めた。在任中は、産業医学基本講座、卒後修練コースなどを立ち上げ、産業医の育成および卒後のフォローアップを行うための学内教育制度改革を行った。また、国内外の産業医学に関する学会、シンポジウムを多数企画・開催し、同大学の知名度を高めることに貢献した。
1986年から18年間、社団法人日本医師会産業保健委員会委員を務め、最後の2年は委員長に就任。また、社団法人日本産業衛生学会の専門医制度において準備段階から18年間その制度づくりに参画するなど、わが国における産業医制度の整備に貢献。国際産業保健学会(ICOH)では長年にわたり、理事、教育訓練委員会委員長も務め、名誉評議員として各国に招かれ、大会において記念講演等を行った。
2005年7月に財団法人放射線影響研究所(放影研)理事長に就任。放射線防護基準作成の基礎資料となっている放射線被曝線量推定の精度をより高めるDS02システムの報告書編集出版作業を前理事長から引き継ぎ、2006年には、この報告書の日本語監訳版を作成した。また、原爆被爆者の生物試料を一元的に保管管理する生物試料センターを設置した。2015年に理事長退任後は放影研顧問研究員となり、東電福島第一原発緊急作業従事者の疫学的研究の代表者として全国的規模の研究班を統括。
2019年4月より、現職の労働安全衛生総合研究所労働者放射線障害防止研究センター長。


(2023年8月3日時点の情報です)


構 成:


Ⅰ 産業医・産業保健とは何か


産業医の生涯とキャリア形成
 1. かつては医師の状態名にすぎなかった産業医
 2. キャリア形成の重要性
 3. 産業医にとっての最終目標とは
 4. どのようにしてキャリアを積んでいくか
産業医の専門性とは
 1. 産業医とはそもそも何か
 2. 変化に十分な対応ができなかった産業医学
 3. 産業医学にとっての「臨床」の範囲とは
 4. 必須業務と任意業務
専門産業医を育てるために
 1. 見よう見まねの修練から体系的な実務教育へ
 2. 産業保健のcore competency
 3. 長期間の卒後教育と修練が必要
誰のための産業保健か
 1. 労働者のための産業保健
 2. 産業保健に求められているもの
 3. 相手あっての産業保健
 4. 事業者への貢献
 5. 産業保健の費用
 6. ミニマムな活動とオプショナルな活動
産業保健の領域
 1. 健康管理
 2. 作業環境管理
 3. 作業管理
 4. 職場巡視
 5. 日本産業衛生学会の専門基準
産業保健の目標の変遷
 1. 典型的職業病とは
 2. 作業関連疾患とは
 3. 重金属類の代表だった鉛
 4. 曝露と中毒発生の関係
 5. 吸入経路と量反応関係
 6. 曝露耐性と感受性
 7. 一酸化炭素の環境調査
 8. 産業医としての考え方は不変


Ⅱ 産業医・産業保健に期待される役割


一般社会から見た産業保健
 1. 企業経営と産業保健
 2. 産業保健活動の評価
 3. 産業医の倫理
 4. 産業医活動は虚業か、実業か
小規模事業場の産業保健
 1. 産業保健の対象としての事業場
 2. 事業場単位で選任される産業医
 3. 産業保健ポリシー確立の必要性
 4. 小規模事業場に対する産業保健サービス
 5. 小規模事業場の健康状況
 6. 産業保健管理上の問題
 7. 小規模事業場の5類型
 8. 小規模事業場における産業保健を進めるために
 9. 企業外労働衛生機関とは
 10. 公益社団法人全国労働衛生団体連合会(全衛連)
 11. 精度管理の重要性
 12. サービス機能評価への期待
地域を基盤とした産業保健センター
 1. 地域保健と産業保健
 2. 全労働者を対象にした産業保健
 3. 産業保健センター設置構想の経緯
 4. センター設置の決定
 5. センター設置構想の真意
 6. センターを良い方向へと導くために
 7. センター長人事における想定外の出来事
 8. 地域医療計画と産業保健サービス提供体制
 9. 専門性の広がりに対応するために
 10. 特殊な専門性への対応と地域との連携
 11. 健康診断促進の担い手としての期待
 12. 独立産業医の支援組織としての役割
 13. 産業医修練場所としてのセンターに
労働者の生涯を通じた産業保健
 1. 健康障害の発症態様の変化
 2. 健康度の改善を目指す健康診断
 3. 健康度の個人差をどう判定するか
 4. 健康情報の長期保存管理に関する課題
産業医の判断
 1. 就業上の措置に関する判断
 2. 臨床医学との境界
 3. 産業医活動の方向性
 4. 産業医の医学判断
 5. 健康管理の範囲
産業医の勧告権と使用者責任
 1. 産業医の勧告権
 2. 労災の予防給付
 3. 企業の危機管理と産業医


Ⅲ 産業医・産業保健のさらなる発展をめざして


これからの労働
 1. これまでの労働
 2. 労働における「快適」の意味
 3. 周辺領域の科学的アプローチに学べ
 4. 快適職場指標の開発
 5. 効果的な適正配置の実現
 6. 組織レベルのメンタルヘルス対策を追求
外部産業保健専門家
 1. 独立産業医と労働衛生コンサルタント
 2. 独立産業医の活躍の場
 3. 事業場側から見た独立産業医の利点と欠点
 4. 産業医側から見た独立産業医の評価
 5. 独立産業医のあり方
 6. 産業医の活動時間と選任基準
 7. 産業医の標準的活動時間の推計
 8. 労働衛生コンサルタント(コンサル)とは
 9. コンサルの最初の大仕事
 10. コンサルの仕事
 11. 優秀なコンサルの養成
産業保健を支える専門家たち
 1. 産業保健現場担当者
 2. 企業内の産業保健組織
 3. 専門職間のチームワーク
 4. 専門性の確立と摩擦の回避
 5. メンバーシップとリーダーシップ
 6. 産業保健専門家の教育訓練
 7. 専門家としての倫理基準
情報化と産業保健
 1. データバンク
 2. ネットワーク
 3. 産業保健における判定・解析
 4. AI自動診断・自動判定
 5. 情報化の進展に向けた仕組みづくりが必要
産業保健の国際標準化
 1. 地域保健制度としての産業保健
 2. 労働問題と経済問題の関係
 3. 産業医制度の国際分類
 4. 自主対応型への変革
 5. ヨーロッパにおける医師免許の国際互換性
 6. EUにおける医師免許の標準化
 7. EUにおける医師の生涯教育
 8. 国際協力での遺憾な経験
 9. 医学レベルや生活習慣の違い
 10. 専門分野としての国際協力学
産業保健制度の将来
 1. 産業保健と地域保健の連携
 2. 多様化する小規模事業場に対応する産業保健
 3. 労働者参加の促進
 4. 個別対応と集団対応
 5. 健康診断のあり方
 6. 有害物質の取り扱いと過重・危険労働の管理
 7. 産業保健専門家の専門性と就業形態