産業医科大学医学部修学資金の返還免除(猶予)、返還請求等の取扱い指針

平成12年10月24日

改正 平成28年 3月 1日
改正 平成30年 10月 1日
公益財団法人 産業医学振興財団

1 趣旨及び目的

修学資金制度が昭和53年に創設されてから約40年経過し、また昭和60年に修学資金制度の運営主体が学校法人産業医科大学から当財団に移管されてから30年余り経過した。

この間に修学資金の返還免除(猶予)、返還請求等の取扱い事例も多数集積され概ね円滑に運営されてきているが、なお一部の事例については修学資金の返還を巡って疑義を生じている事例もみられる。

また、近年、行・財政改革が強く推進されており、国の資金を原資として運営されている修学資金制度についても、国の検査機関から制度のより適正な運用と厳格な債権管理を求められている。

本指針は、上記のような状況を踏まえ、従前から制度の運営を通じて問題となった事項を中心にその内容を整理し、これを指針としてとりまとめたものである。

もとより、当財団における個々の事案の処理については、事案ごとに所定の調査、審査及び決裁手続を踏んだうえで実施するものであるが、その際本指針に示した考え方、内容に即した処理を行い、当財団における医学部修学資金の返還免除(猶予)、返還請求等の事務取扱いの適正かつ迅速な運用に資することとする。




2 基本的な考え方

産業医科大学医学部修学資金貸与規則(以下「貸与規則」という。)第2条は、「医学部修学資金は、産業医等を志向する医学部の学生にこれを貸与してその修学を経済的に援助することにより優れた産業医等を育成し、産業医学の振興を図ることを趣旨とする。」と規定し、当財団の理事長と各学生及びその連帯保証人2名が修学資金の貸与及び保証に関して締結した産業医科大学医学部修学資金貸与契約書(以下「 貸与契約書」という。)第1条も同様に規定している。

また、貸与規則では、医学部を卒業した貸与終了者(以下「卒業生」という。)が医師となり、所定の産業医等の職務に、修学資金の貸与期間(通常6年間)の1.5倍に相当する期間(通常9年間、以下「義務年限」という。)本務として従事した者については修学資金の返還を全額免除する(第22条第1項)とともに、所定の産業医等の職務に義務年限の期間従事しなかった者に対しては、修学資金を返還させなければならない(第14条第1項)旨を規定している。


修学資金制度の発足から相当年月経過して社会状況も大きく変化し、制度の曖昧な運営は許されなくなっているので、従前にも増して貸与規則及び貸与契約書の規定を厳密に適用して制度を運用していくこととしている。




3 産業医制度の概要と産業医の勤務態様(業務量)について

(1) 産業医制度の概要について
  貸与規則は、修学資金の返還免除の対象となる職務の第一に「 労働安全衛生法第13条に規定する産業医」(第3条第1号イ)と規定し、貸与契約書第2条も同様に規定している。
  労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)第13条は、事業者に常時50人以上の労働者を使用する事業場(労働安全衛生法施行令(以下「安衛令」という。)第5条)ごとに、①産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に産業医資格を有する医師の中から産業医を選任すること、②その者に当該事業場の労働者の健康診断・健康管理、作業環境の維持管理、作業の管理、健康・衛生教育、作業場の定期巡視等の職務を行わせること、③その際、事業者は産業医を選任したときは遅滞なく産業医選任報告書を当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出すること等を義務付けている(労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)第13条、第14条)。
  そして、次の者(①及び②にあつては、事業場の運営について利害関係を有しない者を除く。)は、産業医資格を有していても当該事業場の産業医に選任できないと定めている(安衛則第13条第1項第2号)。
① 事業者が法人の場合にあつては当該法人の代表者
② 事業者が法人でない場合にあつては事業を営む個人
③ 事業場においてその事業の実施を統括管理する者
 また、安衛法第18条及び第19条は産業医のうちから事業者が指名した者が(安全)衛生委員会の委員になる旨を規定している。
 さらに、常時1,000人以上の労働者を使用する事業場又は所定の有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場ではその事業場に専属の産業医を選任すべき旨(常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では2人以上の産業医を選任すべき旨)を規定している(安衛則第13条第1項第3号、第4号)。

(2) 産業医の勤務態様(業務量)
 貸与規則第3条は、産業医等の定義として「次のいずれかの職務に本務として従事する者」と規定し、貸与契約書も同様に規定している。
 国の検査機関から従前の定期報告書では産業医の業務内容の把握が不十分であるとの指摘もあって、平成10年度から改正した定期報告書では、産業医業務の項目ごとの月間及び年間の平均活動日数の記入とこれについての事業場の責任者の証明を求めている。ただし、産業医であっても医療技術の向上等のために臨床医的業務(一般診療)を一部行うことまで否定するものではないので、臨床医的業務の記載欄も設けてある。
 1日当たり及び1週間または1ヶ月間の所定労働時間は事業場ごとに異なっており、日によって所定労働時間が異なる場合もあるので通常は1週間または1ヶ月間の所定労働時間で判断することとなるが、上記の諸規定の趣旨からすれば、卒業生である医師が本務(常態)として当該事業場の産業医の業務に従事していると認定するためには、当該事業場における産業医活動に従事する時間が、最低限でも平均して所定労働時間の半分以上(2分の1以上)あることが必要である。
 この場合、産業医としての活動時間が業務量の変動により所定労働時間の半分以上に達しないときは、本務(常態)として産業医の業務に従事したとは認められなくなるので、安定的に産業医の業務に従事したと認定するためには、原則として産業医活動に従事する時間が所定労働時間の3分の2程度以上あることが望ましく、卒業生である医師等に対してこの旨の指導を継続的かつ機会あるごとに統一的な方針に基づいて行うこととしている。


4 施設基準上の常勤医師等の届出について

 貸与債務の返還免除が確定するまでの期間において、産業医(本項においては以下
において、指定職域健康診断実施機関に勤務する医師を含む。)としての職務を行いつつ臨床医業務を一部行う場合については、産業医の職務に「本務」として従事する必要があることはもとよりであるが、所属している病院等から健康保険法等の規定に基づく診療報酬の加算等に係る診療科の医師としての施設基準上の届出が、地方厚生局等の権限のある行政機関に提出される場合がある。
診療報酬の加算等に係る施設基準上の届出に関しては、届出の種類に応じて、関係する診療科の医師として「常勤」、「専属」、「専任」、「専ら従事する」などの表現により、従事が行われていることの届出が求められている。
 これらの届出の内容が診療報酬の加算等に係る制度の趣旨等に即して、実態を反映した適正なものであるか否かに関しては、地方厚生局等の権限のある機関が判断することとなるものであるが、これらの届出が行われていることと、産業医が本務であることは、一般には両立しないものと考えられるので注意が必要である。
このようなことが生じないよう、新たな勤務に就く場合には、労働契約などで、産
業医が本務であることが勤務態様(業務量、勤務時間)の面からも実態として確保されるようにするとともに、産業医を本務として勤務を行っていることと矛盾するとみられる診療科の医師としての従事についての施設基準上の届出が地方厚生局等に行われることのないよう、必ず確認の上、勤務を開始するようにすることが重要である。
 もとより、修学資金貸与制度の運用における免除対象期間としての認定に関しては、産業医の職務に本務として従事している実態に基づいて行われるものであるが、施設基準上の上記のような届出が行われている場合に関しては、産業医の職務に本務として従事していることに関して重大な疑義を生じさせることになるものであること、また、このような届出が卒業生の預かり知らないところで行われる場合もあり得ることから、このような注意喚起を行うものである。
 財団はこれらのことに関する適正な状態が遵守され、関係者が継続して注意を怠らないよう、勤務先の病院等に対する注意喚起及び卒業生である医師に対する周知や指導を機会あるごとに行うものとする。  
 なお、診療報酬の加算等に関する施設基準上の届出に関しては、制度上様々な異なる態様のものがあり、診療科の医師としての複数の医師による非常勤の勤務を合算して常勤1名として換算する常勤換算の仕組みにより、これらの届出の内数として算入されることと産業医に本務として従事することが矛盾せずに両立し得るものであることはありうると考えられる。このように施設基準上の届出に関連する実務上の問題に関しては、複雑な面もあるので、疑義が生じた場合に関しては財団に照会するものとする。
 あわせて、貸与終了者が産業医の職務に本務として従事するに当たって、当該貸与終了者が健康保険法第64条の規定に基づく保険医の登録を行ったものであることは、それ自体何ら問題のないものであるので、留意されたい。


5 企業立病院等に勤務する医師の取扱いについて

 医療法第1条の5は、「病院」とは医師又は歯科医師が公衆又は特定多数人のため
医業又は歯科医業を行う場所であって20人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう旨規定し、また「診療所」とは同じく患者を入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう旨規定している。
 工場事業場構内にある小規模の診療所で、産業医が事実上当該事業場の労働者のみ
を対象として診療、健康診断、健康指導等の業務を行っている場合は、産業医業務の一環として修学資金の返還免除対象と認められるが、企業が大規模な施設、設備及び多数の医療スタッフを擁して設立して経営するいわゆる企業立病院で上記医療法でいう公衆又は特定多数人のための医業が主体となっているものについてはこれと同一視することはできない。
 このような企業立病院では、通常当該企業の労働者も診療の対象ではあるものの、
経営上の必要性からもそれ以外の一般公衆又は特定多数人が主たる対象となっており、卒業生である医師がこのような病院に配属された場合の業務内容も、他の医師と同様の外来患者又は入院患者の診察、治療等の一般診療であるのが通例であり、上記3の(1)の安衛法第13条で規定する産業医としての業務とは異なる。
よって、卒業生である医師がこのような企業立病院に配属されて臨床医を本務とし
て勤務した期間は、原則として返還猶予及び返還免除の対象期間としては取り扱わな
い。
 ただし、例外として、企業立病院における臨床業務に一部従事している者が、当該企業の本社、工場又は病院等の産業医に選任されて、本務として(又は常態として)産業医業務に従事したことが発令上及び実績上証明された場合に限り、免除対象期間として取り扱うこととする。
 この場合、次の「6 病院の産業医の取扱いについて」の産業医を本務として臨床業務を兼務する場合に準じて安衛則第14条に定められた産業医業務が本務であることを裏付ける資料として、定期報告の添付資料として次に掲げる資料の提出を求め、産業医業務が本務であることを確認するための裏付けとすることとする。
① 職場巡視実施を証明するもの
(例:職場巡視記録)
② 安全衛生委員会議事録
③ 改善勧告(提案・意見)
④ 健康相談・面接指導実施記録
⑤ 労働安全衛生教育計画・実績
⑥ 関連学会での報告・発表
⑦ その他産業医活動実績を証明しうるもの



6 病院の産業医の取り扱いについて

(1)病院の産業医の取扱いについて(一般的な留意点)
 平成14年に国立大学の独立行政法人化がきっかけとなり、国立病院群更に県立や市立など公立大学の法人化が進展し、  従来国家公務員や地方公務員であった職員が非公務員扱いとなり、安衛法第13条に規定する産業医選任義務のある事業場となった。
 しかしながら、これまでの状況を振り返ると、わが国の専属産業医を必要とする一般企業から産業医大への産業医要請に対する供給は十分に対応出来ていると言えない現状があり、また、これら病院内部には、一般的には認定産業医など産業医、産業保健活動を適切に推進する人的資源は備わっていると考えられる状況等に鑑み、また、これに加えて、病院の産業医に関しては、産業医と臨床医のいずれが本務であるかに関して疑義が生ずる事例がこれまでにもみられたことから、病院の産業医が、産業医業務を本務としつつ臨床業務を兼務する場合には、安衛則第14条に定められた産業医業務が本務であることを裏付ける資料として、通常の定期報告以外に次に掲げる資料の提出を求め、産業医業務が本務であることを確認することとする。
① 職場巡視実施を証明するもの
(例:職場巡視記録)
② 安全衛生委員会議事録
③ 改善勧告(提案・意見)
④ 健康相談・面接指導実施記録
⑤ 労働安全衛生教育計画・実績
⑥ 関連学会での報告・発表
⑦ その他産業医活動実績を証明しうるもの

(2) 病院が受託した嘱託産業医業務に従事する場合について
 病院の産業医として選任された者が、当該病院が事業場から嘱託産業医業務を受託し、その指揮命令により派遣され産業医に選任されて産業医の職務を行っている場合は、勤務先の病院代表者が証明する定期報告書を以て選任先の事業場の定期報告書の勤務証明に代えることができるものとする。この場合、嘱託産業医として選任されている事業場の業種、名称、所在地、労働者数のリスト及び産業医選任報告書の写し、健康診断結果報告書、職場巡視報告書等の活動実績を添付するものとする。


7 産業医事務所に勤務して、又は独立して嘱託産業医の職務に従事する場合の取扱いについて

義務年限期間中の卒業生が産業医事務所等に所属し、あるいは独立して嘱託産業
医の職務に「本務」として従事する場合に関しては、その就業の実態が貸与規則第
3条第1号イに規定する「労働安全衛生法第13条に規定する産業医」に本務として従事しているものであることの審査、確認を行ったうえで返還債務の免除対象と
なる期間に該当することの認定を行うこととするが、審査基準の適正を確保する等
の観点から、その勤務に関連する要件等に関し財団理事長が別に基準を定めるまで
の間、当面、以下に掲げる形態で産業医活動を行うことにより免除対象期間として
の認定を受けようとする貸与終了者は、あらかじめ財団に連絡の上協議を行うもの
とする。
① 一定の条件を満たす産業医事務所(注)に労働者として勤務し嘱託産業医の職
 務に本務として従事する者
② 独立して嘱託産業医の職務に本務として従事する者
(注)産業医事務所とは、主たる事業目的が事業場と嘱託産業医契約を締結し、産業医資格を有する所属の医師に受託先事業場の産業医の職務を行わせる法人又は個人の事業であるものをいう。


8 産業医及び産業医活動2年義務について

(1) 対象業務について
 平成16年度医学部入学生より、修学資金返還免除の要件として「義務年限(修学資金を貸与した期間の1.5倍に相当する期間)のうち2年間は産業医又は理事長が指定する機関で産業医活動を行うこと」を義務付ける修学資金制度の改正を行った(貸与規則第22条第2項)。
 具体的には「産業医科大学医学部修学資金貸与規則第22条第2項第2号に規定する理事長が指定する機関及び産業医活動(平成20年10月16日達第2号)」(以下、「理事長達」という。)に基づき、次のいずれかの業務に2年以上勤務することが免除の要件となった。
① 企業等の産業医に就く。
② 指定職域健康診断実施機関における受託産業医業務等の産業医活動を行う。
③ (独)労働者健康安全機構の勤労者医療総合センターに所属し、受託産業医業務等の産業医活動を行う。
④ (独)労働者健康安全機構の過労死等調査研究センターに所属し、過労死防止対策に関する調査・研究に係る活動を行う。
⑤ 厚生労働省労働基準局安全衛生部に所属し産業医学・産業保健政策の企画立案
に携わる。

(2) 職域健康診断実施機関又は勤労者医療総合センターに勤務する場合の留意事項
 上記(1)の②③の指定職域健康診断実施機関又は勤労者医療総合センターに所属する医師については、兼務が想定されるため、最低120日(960時間)/年が産業医業務であり、その内数として最低60日(480時間)が安衛則第14条に規定する中核的産業医業務であることを量的要件とすることとしている。
 どの活動が産業医活動に該当し、その内どれが中核的産業医活動に該当するかは理事長達及び「平成20年10月16日達第2号に基づく理事長が指定する機関及び産業医活動の運用細則について(平成21年3月31日)」(以下、「運用細則」という。)に定めにあてはめて判断することとなる。
 指定職域健康診断実施機関または(独)労働者健康安全機構の勤労者医療総合センターが事業場から嘱託産業医業務を受託して、これに基づき、卒業生が派遣され産業医に選任されて産業医の職務を行う場合は、全ての活動時間が中核的産業医活動に該当するが、それを裏付けるものとして、産業医に選任されているすべての事業場の業種、名称、所在地(電話番号)、常時使用する労働者数、産業医選任年月日を記載した一覧表を作成して添付すること。
 また、日常の産業医活動を裏付けるものとして、全ての事業場について次のもの
を添付すること。
① 所轄労働基準監督署の受付印のある産業医選任報告書の写し
② 所轄労働基準監督署の受付印のある健康診断結果報告の写し(担当産業医として押印があるものに限る)
③ (安全)衛生管理体制組織図(卒業生の氏名入り)
④ (安全)衛生委員会の議事録(写し)
⑤ 職場巡視実施を証明するもの(職場巡視記録など)
  ところで、運用細則の「7. 調査・研究活動」に該当する場合は、「産業医学・産業保健活動に密接に関わる調査・研究」であることを説明する文書を添付し、その文書には、当該調査・研究がその①調査・研究テーマ、②研究期間、③研究組織、④研究の目的が産業医学・産業保健活動に密接に関わる調査研究であること、⑤卒業生が研究組織の研究者として選任されていることを記載すること。

9 国家公務員に対する適用について

 国家公務員法附則第16条は、一般職国家公務員の職員には安衛法は適用しない旨
規定しているが、行政執行法人の労働関係に関する法律第37条第1項第1号は行政執行法人の職員(行政執行法人に勤務する一般職に属する国家公務員)については上記国家公務員法附則第16条の規定は適用しない旨規定している。
 よって、卒業生である医師が行政執行法人の職員として採用され、その事業場に安
衛法第13条の産業医に選任され本務として従事することは貸与規則第3条第1号のイに該当することから、返還猶予期間(貸与規則第20条)、返還免除の対象期間及び第2項義務の対象期間(第22条第1項、第2項)として認めることとする。ただし、行政執行法人が開設した大規模病院等において当該卒業生である医師が一般診療を本務として勤務している場合は返還猶予及び返還免除の対象期間とはしないことは、上記5の企業立病院等に勤務する医師の場合と同様である。
 行政執行法人以外の官公署で勤務する一般職国家公務員の職員については、上記の
とおり国家公務員法附則第16条の規定により安衛法の適用が除外されていることから、卒業生である医師がこのような国の官公署において一般職員を対象とする健康管理医として勤務したとしても、安衛法第13条に規定する産業医に選任されているとはいえないことから、貸与規則でいう「労働安全衛生法第13条に規定する産業医」の職務に本務(常態)として従事したとは認められないので、返還免除の対象期間とは取り扱わないこととする。


10 地方公務員に対する適用について

 地方公務員法第58条は、一般職地方公務員の職員には安衛法の規定の一部を適用
しない旨及び規定を適用する場合も安衛法に基づく労働基準監督機関の職権は原則として人事委員会又は地方公共団体の長が行う旨規定している。しかし、地方公営企業法第39条は、地方公共団体が経営する企業に勤務する一般職地方公務員の職員については上記地方公務員法第58条の規定は適用しない旨規定している。
 すなわち、地方公営企業(水道事業、工業用水事業、軌道事業、自動車運送事業、
鉄道事業、電気事業及びガス事業等)に勤務する職員には安衛法及び関係する政令、
規則等が全面的に適用される。したがって、これら職員が勤務する事業場については、
上記4に記載した産業医の選任及び労働基準監督署長への届出義務、産業医の職務内
容等の規定がそのまま適用され、他の民間企業の事業場と同様に労働基準監督署によ
る立入検査等も実施されている。
 よって、卒業生である医師が地方公営企業の事業場において本務(常態)として産
業医業務に従事した場合は、規則で定める「労働安全衛生法第13条に規定する産業
医」の職務に従事した場合に該当するので、当該期間は返還免除の対象期間として取り扱う。
 ただし、地方公共団体が設立した大規模病院等において当該医師が一般診療を主体
に勤務している場合は返還免除の対象期間とはしないことは、上記4の企業立病院等
に勤務する医師の場合と同様である。
地方公営企業の事業場以外の地方公共団体の官公署で勤務する一般職地方公務員
の職員については、上記のとおり、地方公務員法で安衛法の規定を一部適用しないこと及び適用する場合も労働基準監督機関の職権は人事委員会又は地方公共団体の長が行う旨規定されているので、卒業生である医師が地方公共団体の官公署で勤務した期間は返還免除の対象期間としては取り扱わないこととする。



11 職域健康診断実施機関に勤務する医師の勤務態様(業務量)について

平成11年12月27日達第6号「産業医科大学医学部修学資金貸与規則第3条第1号ホに規定する理事長が別に指定する産業医学の実践の機関及びその指定要件について」により、従前、財団の理事長が免除対象職務の機関として指定していた特殊健康診断実施機関は職域健康診断実施機関と改められ、その指定要件及び運用細則も改正された。

この指定要件では、当該指定機関に勤務する医師(主として健康診断関連業務に従事する専属(常勤)の医師をいう。)一人当たりの年間の職域健康診断実施件数が概ね10,000件程度あり、かつ、そのうち特殊健康診断実施件数が原則として概ね5,000件程度あることと規定されているので、卒業生である医師が当該機関に就職した場合はこの条件を満たすような勤務を実際に行う必要がある。

また、上記の規定では、医師一人当たりの年間の特殊健康診断実施件数が概ね5,000件程度に達していない場合は、当該機関が事業場と嘱託産業医契約を締結して医師の産業医業務の実践を保障していることが条件となっている。これに該当する場合は、当該機関から事業場と嘱託産業医契約を締結して医師の産業医業務の実践を保障している旨を記載した覚書等を財団に提出させるとともに、卒業生である医師が提出する定期報告書にこれらの業務の実施状況の記載を求めて、上記の条件が満たされているか否かを確認することとする。


当該指定職域健康診断実施機関が事業場と嘱託産業医契約を締結し、その指揮命令により卒業生が派遣され産業医に選任されて産業医の職務を行っている場合は勤務先の指定職域健康診断実施機関の代表者が証明する定期報告書を以て選任先の事業場の定期報告書の勤務証明に代えることができる。この場合、嘱託産業医として選任されている事業場の業種、名称、所在地、労働者数のリスト及び産業医選任報告書の写し、健康診断結果報告書、職場巡視報告書等の活動実績を添付するものとする。

12 派遣勤務者の取扱いについて

 貸与規則で修学資金の返還免除対象として規定されている職務への勤務は、その本
旨に則った業務に現実に従事していることを要する。例えば、貸与規則は免除対象職務として、産業医科大学の教育職員、労働者健康安全機構の医師等を規定しているが、修学資金の免除対象期間とするためには現実に同大学の助教等又は労働者健康安全機構の医師の職務に本務として従事している必要がある。
 上記の例で、当該医師が産業医科大学の教育職員に籍を置いたままで企業の産業医
として派遣、選任され、産業医の職務に本務として従事して企業から賃金の支払いを受けることとなった場合は、勤務先を産業医科大学の教育職員(貸与規則第3条第1号ロ)から企業の産業医に変更したことに該当するので貸与規程第8条に基づき異動届(様式第6号)を提出する必要がある。この場合、産業医科大学の教育職員も企業の産業医も貸与規則第20条第1項第4号の「産業医等」に該当するため返還猶予申請書(貸与規則第20条)提出の必要はない。
 また、派遣先が修学資金の返還免除の対象とならない一般病院等の臨床医の職務に本務として従事する例では、貸与規則第20条第1項第8号の規定(産業医等の職務に復することを条件として一定期間(2年を限度)他の職務に従事)に基づき財団に返還猶予申請を行って承認された場合に猶予期間となるにとどまるので注意を要する。
 また、貸与規則第22条第4項では産業医科大学が開設する専門産業医コースⅠ又
は専門産業医コースⅡ等における修練の期間は、卒業生である医師がその後に義務年限を全うした場合には、通算して4年(同項第1号又は第2号の場合は5年)を限度として産業医等として勤務した期間とみなす旨が規定されている。
 コースの修練の一環として行われる派遣については、当該医師が義務年限を全うし
た場合は、派遣先が免除対象職務であるか否かを問わずに上記の如く通算して4年(貸与規則第22条第4項第1号又は第2号の場合は5年)を限度に免除対象期間として取り扱う。しかし、当該医師が義務年限を全うしなかった場合には、貸与した修学資金を全額返還しなければならないので注意を要する




13 返還猶予の取扱いについて

(1) 修学資金返還猶予申請と異動届について
 貸与規則第20条は、卒業生である医師が修学資金の返還猶予を受けようとする場合には、予め返還猶予申請書を財団の理事長に提出しなければならない旨規定しているので、当該医師の返還猶予・免除の状況確認のためにも上記規定を遵守する必要がある。
 なお、企業の産業医から他の企業の産業医に転職する場合は、ともに貸与規則第20条第4号に該当するので修学資金返還猶予申請書を新たに提出する必要はないが、転職先が返還猶予対象職務であることの確認、連絡先の確保のため異動届を財団理事長に提出しなければならないこと(貸与規則第12条第2項)に注意が必要である。

(2)返還猶予事由別の留意点について
 産業医学の履修のための留学(2年を限度とする。ただし、当該留学に係る課程を修了するために2年を超えて猶予することが必要であると認める特段の理由があるときは、当該課程を修了するために必要かつ合理的な限度とする。)を事由とする返還猶予申請(貸与規則第20条第7号)については、理事長が修学資金運営委員会の意見を聴いたうえで判断することとなっているので、必要な証明書類を添付して期日の余裕をもって早期に申請を行うことを求めていくこととする。例外として、理事長が留学決定時期の遅延等相当の理由があると認めたときは、事後に上記委員会に諮ったうえで判断することとするが、当該事案が産業医学の履修のための留学とは認められない場合は、申請者に対して帰国を求め又は修学資金の返還を請求する。
 産業医等として勤務した者が、産業医等の職務に復することを条件として一定期間他の職務に従事すること(2年を限度)を事由とする猶予申請(貸与規則第20条第8号)については、一定期間後に産業医等の職務に復する旨の勤務先責任者の証明書を添付して申請することとなっているので、その励行を求めるとともに、当該期間経過後、現実に産業医等に復職したことを確認することとする。なお、この事由により猶予が認められる者は、免除対象職務の産業医等として勤務した者に限られ、大学院及び産業医学卒後修練課程在籍者は対象とならないことに注意を要する。
 産業医等として勤務した者が離職して他の産業医等として勤務するまでの期間(60日を限度とする。ただし、理事長は修学資金運営委員会の意見を聴いて特に必要があると認めた場合は、延長することができる。)を事由とする猶予申請(貸与規則第20条第9号)については、期間を徒過しがちであるので、事前の猶予申請書の提出及び新たな産業医等への従事の確認に十分留意する必要がある。




14 修学資金返還請求等の取扱いについて

 貸与規則第14条第1項は、卒業生である医師が産業医等として勤務しなかったとき等所定の事由に該当するに至ったときは、その事由発生日の翌月末までに修学資金を返還させなければならない旨、貸与規則第17条は、返還期日までに返還されなかったときは延滞利息を付加する旨を規定している。
 このため、財団の理事長と各学生とで締結した契約書及び適用される貸与規則の規定に則って、修学資金の返還事由が発生した事案については、事実関係の確認を行ったうえで所定の決裁手続を経て直ちに返還請求を行う。
 事実関係の確認は、規定に基づいて本人に提出が義務付けられている定期報告書、異動届等の報告書を基本とし、更に必要がある場合は財団から本人宛に文書で質問等を行い、本人から文書で事実関係の説明等を求めることとする。
 勤務先に対する調査については、規定上当然に実施できることにはなっていないので、相手方の協力が得られる限度で必要な報告等を求めることとする。また、勤務先の現地調査については、特に必要があると認められる事例についてはこれを実施する。
 貸与終了者、貸与学生又はこれらの者の連帯保証人が返還債務について所定の手続きによる弁済の催告を受けても財団理事長の指定した日までに弁済しない場合は、財団は貸与規則第19条に規定する返還の強制(民事訴訟法、民事執行法その他強制執行の手続きに関する法令に定める手続)を行うこととする。